噛み癖とは|大西歯科医院|下関市彦島江の歯医者

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噛み癖とは
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噛み癖とは

一言で言えば「噛みすぎ」のことです。

病気ではなく、使い方の誤りが破壊を招きます。過剰な力が加わって限界を超えれば変化が起こります。 悪化原因がなくならなければ、やがて歯を失い、総入れ歯になり、その入れ歯も合わないという悪循環に陥りかねません。歯がなくなってからも、入れ歯を載せている骨が減ってしまうからです。なるべく早い段階で改善しましょう。

しかし、噛み癖は治療では改善できませんし、患者さまの自己流でも、なくせないものです。原因を突き止めて取り除き、「標準的」な状態にする必要があります。噛み癖はほとんどの方が無自覚で、主に睡眠中に行ってしまいます。成り行き任せでは悪化するだけで、自分ではコントロール不可能です。ご本人の思いと逆の結果になってしまうこともよくあります。だからこそ、歯科医師によるサポートが役立ちます。

噛み癖の除去・軽減ができれば、悪化は食い止められるでしょう。それは、ご本人が癖を改め、お口を標準的に使うことです。結論は「普通に噛むだけ」なのですが、数十年にわたる癖をなくすのは非常に難しいと思います。訓練が必要ですが、癖をすっかりなくすことはできないかもしれません。ポイントは、感覚を切り替えることです。

「標準的」というのは、口腔環境が悪くならない方と同じように使うことです。無駄な力をかけずに必要十分の力で噛むようにします。自己流で噛んではいけません。悪化が始まってから改善するよりも、予防することが望ましいと言えます。

噛み癖が悪くなる原因について

誤った噛み方をしてしまう理由は「生来の特質+ストレス」だと考えます。

生まれもった癖は、ほとんどの方にあります。歯ぎしりと同様に、自覚することはめったにありません。歯自体の個人差は小さいのに対して、噛み癖の差は大きく、 さらにストレスに比例して増大するという特徴があります。ストレスをまぎらわせるために、歯を噛みしめてしまうからです。

また睡眠中、深い眠りの前後には、特に強い力で噛んでしまうとされています。なかには、歯が割れる寸前の痛みで目が覚めたり、 歯が割れる夢を見たりする方もいるそうです。一方、昼間は気分のままに噛みしめたり、雑に噛んでしまったりする方がよくいらっしゃいます。食事以外の場面でも、力を出そうとした拍子に歯を食いしばってしまうことがあります。

当然のことながら、度が過ぎれば歯に問題をもたらし、いずれは歯を失い、入れ歯も合わないという状態になってしまうでしょう。

歯列接触癖(TCH)という言葉があります。 噛み癖がない方ですと、24時間中18分しか上下の歯が当たらないとされています。それが噛み癖のある方は数時間〜十数時間当たっている状態です。ストレスがない方はいらっしゃらないでしょうし、歯列接触癖があると自覚していない方も多いのではないでしょうか。

噛み癖が悪いと起こり得るリスク

虫歯と歯周病は細菌感染によるものですが、噛み癖があると細菌がいなくてもお口に悪影響が生じてしまいます。

  • 歯の形態変化
    すり減るだけでなく、欠けたり、砕けたりすることがある。大きく割れれば抜歯となる。
  • 歯並びの変化
    歯が傾いたりずれたりして位置が悪くなると次第に噛みづらくなる。噛めなくなってしまう。 見た目にも好ましくない状態へと変化。
  • 歯の周りの変化
    歯周組織のなかでも特に歯槽骨が変化し、歯周病 (歯が支えている骨が減少する病気) を 併発して早期に悪化する。数本の歯がまとめて揺れるようになったり抜け落ちたりすることもある。痛みといったサインが出にくい。
  • 味覚の低下
    味覚を感じにくくなる。噛み癖によるものだと気がつかず、もっと強く噛もうとしてしまうことが多い。
  • 口腔内のトラブル
    舌や頬の内側、唇に歯型が残り、口内炎の要因となる。
  • 入れ歯の不適合
    入れ歯が合わないと感じる。実際は、噛み癖のままに噛むと使いにくいため。歯茎で入れ歯を支える場合、噛む力の限界は歯の3割が目安。3割の力があれば食事には差し支えないので、歯茎に無理をかけずに使いこなすことが必要。原則にしたがい、噛む要領をつかむことが重要となる。

加齢による変化では歯を失うことはないと考えています。噛み癖を改善すれば、歯を残せる方向に未来を変えることができるはずです。噛み癖の強さに比例して、歯は悪化してしまいます。100年使っても歯が悪くならない使い方を目指しましょう。

噛み癖をなくせないまでも、軽減できれば悪化はペースダウンし、歯を長く残せるようになります。悪化原因を大きく減らし、補強治療や噛み合わせの改善がうまくいけば、末永く歯を残し、減ってしまった骨が戻ることも期待できるようになります。

悪化した歯の治療ではなく、悪化原因を減らすため予防に取り組みましょう。原因が少なければ、悪化しても少しの変化で済むため、将来に向けて残せる歯が増えると考えられます。誰もが総入れ歯になるわけではありません。起こることには理由があります。ただし、保険診療には噛み癖の改善という観点があまり含まれていません。したがって保険適用で治療できるのは軽度の噛み癖だけです。

噛み方について正しく切り替えるということは、今までの日常を切り替えることを意味します。何を切り替えるのかご本人が気づき、努力して改善しなくてはなりません。歯科医師にお任せではなく、言われたことを理解して実践しなくてはならず、困難を伴います。

噛み癖がなくなれば「普通」の状態に落ち着きます。噛み癖による問題が起きない方は、元々そういう状態です。過剰な力で噛んでも、疲れるだけかもしれません。噛むことを諦めず、お口を「要領良く」使うことをご自分の力で習得してください。

結論は「普通に噛む」です。当たり前のことを当たり前にできるよう頑張りましょう。

噛み癖の治療方法

噛み癖の治療方法の流れ

まずは保険診療の診査を実施します。必要があれば、簡略的なコースの概略をご説明します。噛み癖がない方はほとんどいませんが、治療に進むか否かは通院の必要性とご希望に応じて本人が決定します。費用次第という方も少なくありません。ただし、将来的なことを考えれば、早期に悪化を防ぐことこそが経済的だと思います。先送りにして悪化が進めば治療費もかさんでいくことをご理解ください。

1.ヒアリング

患者さまの訴えを伺い、まずは一通りの診査を行います。

本格的な治療では、約50項目の問診を行います。食事に関連して口腔状態が変化していると思う方が多いでしょうが、食事は要因のほんの一部に過ぎません。食事以外の日常生活による影響が大きいため、その詳細を尋ねます。

何より重要なのは、原因を突き止めることです。いつもと違う出来事(体調の変化、死別)や心配事(家族を含む)があった時、年度変わりは、特に噛み癖が出やすいタイミングです。仕事上の変化やストレスは影響が出やすい傾向があります。コミュニケーションを重ねるほどに患者さまの傾向や好みなども分かるようになるので、大変参考になります。

2.検査

問診
ヒアリングの延長でもありますが、治療の大きな柱の一つです。病気に直接関連することはもちろん、既往症なども漏らさず教えてください。ご記入いただいた問診表に加え、スタッフと担当の歯科医師からも確認します。後日思い出したことがあれば、ぜひ教えてください。項目によっては数十回確認することもあります。

視診
口腔内の診療を行います。現在の歯・顎の骨の状態は、過去数十年間にわたる噛み方・使い方の結果です。口腔内カメラを使って実際の映像をお見せし、ご本人が気づいていない箇所も含めて率直にお話しいたします。同時に記録を残し、治療中・治療後にも参照できるようにします。画像が一人の患者さまで数千枚になることもざらです。またお口の中だけでなく、お顔全体、身体全体の状態も記録します。

触診
歯周検査はもちろん、歯茎の状態もチェックします。患部を押したり触ったりして、痛みの加減などを調べます。骨の状態の診査もあります。

運動状態
お口の動きを中心に、歩行や診療チェアでの姿勢も調べます。開閉だけでなく、横方向の動きが苦手な方も、よくいらっしゃいます。治療がスムーズに進むよう、基本的な動きはできるだけ早く習得し、ご自宅でも鏡を見て練習してください。

咬合紙による咬合診査も行い、バランスを見ると同時に、引き抜き方法による咬合圧も確認します。

レントゲン診査
歯や骨、顎関節など、外から見えない部位はレントゲンを使って診査診断します。大切なのは、目の前のレントゲン情報を理解し活用することです。当院では、30年以上のデータがある患者さまもいらっしゃり、長期的な変遷も観察することができます。

歯周検査(EPP、MT)
【 EPP 】 歯周ポケットの深さを測定します。歯周病の程度やタイプ、歯根亀裂の有無・程度などが分かります。

【 MT 】 歯の動揺度診査です。噛み癖を調べる場合は、20段階以上にも分けて詳しく観察します。この診査により、これまでに起きたことや今起きていることが判明し、今後の予測につながります。

この検査をすることが、患者さまに噛み癖の説明をする根拠となります。患者さまにとっても、事実に基づくお話を聞くことが、ご自分の状態に気づいたり何かを思い出したりするきっかけになるのではないでしょうか。

現時点での歯の揺れは、悪化度合いの現状を示しています。噛みすぎの様子もさまざまで、「ギリギリ」「ガツンガツン」「ギュ〜ッ」の3パターンがあります。 MTでは0.05mmの揺れ幅の差をも判別するため、患者さまがどれだけ一生懸命改善に取り組まれたかも見分けることが可能です。ご本人の意欲が見られない場合は、治療を中止することもあります。

プレスケール
機械による噛み合わせ診査です。噛む強さやバランスを可視化して表示することができます。ただし厳密さに欠けるため、あくまでも参考として使用します。

スタディモデル診査
上下全体の型を取り、歯列を中心としたお口の状態を模型で再現します。歯列の後方・内側から見た噛み合わせの診査が可能になります。

3.カウンセリング

ヒアリングや問診の延長でもあり、悪化原因の除去に向けてアドバイスを提示する段階です。

ここまでの流れの途中でも、折に触れてアドバイスは差し上げます。少しでもご理解の助けとなるよう、スタッフからも同様のアドバイスをお伝えしたり、表現方法を変えてご説明したりします。誤解していたり忘れてしまったりする方もいらっしゃいますから、患者さまの個性に合わせ、回数を重ねてお伝えする方針です。なるべく少ない手間で「現状維持が期待できる=歯を残せる」状態、つまり「大丈夫な状態」を目指します。

何か問題があったりうまくいっていなかったりする場合は、歯科医師による診察で分かります。今まで慣れた噛み方を変えるわけですから、嫌だと感じることもあるでしょう。いくら費用をかけていただいても、ご本人が取り組まなければ結果にはつながりません。早期の取り組みやご本人の改善意欲が、良い結果につながります。もちろんあまりにも苦手なことや体調のご都合もあると思いますので、困った時は自己判断せず、歯科医師にご相談ください。

なかには「癖だから仕方がない」と諦めてしまう方もいらっしゃいますが、せっかく来院されたのですから、できる限りのことをして差し上げたいと思います。

治療のご説明時には、口腔内写真とレントゲン、模型などさまざまなツールを使います。特に模型は後ろや内側から見て噛みやすさをご説明するのに役立つものです。そして、歯を残すために欠かせないことや補強的治療の内容についてお伝えします。

4.治療

指導が治療の要です
噛み癖治療の要であり、さまざまな段階があります。噛み癖がない方の場合は、状況をご説明するだけで終了です。また「よく噛んで食べる」という意味を勘違いして、あえて強く噛んでしまっていたケースが意外にも大変多くあります。こうした場合は、誤解を解くことで噛み癖の改善が期待できるため、保険診療以外の費用は発生しません。

2回目の診査で治療費用が決まります
最初の診査で噛み癖が出ていた方を対象に、改善方法や要領をある程度までご説明します。その後、2回目の診査結果に応じて治療費用をご提示します。結果次第では、治療を中止する場合もあります。

噛み癖は、程度に応じた治療が必要です。訓練して噛む力が許容範囲内になれば、次の段階に進むことができます。歯を長持ちさせるため、噛む力の程度に合わせた補強治療を行います。

予防のためマウスピースの使用をご提案します
ごく軽度の方を除き、噛み癖のある方にはマウスピースの使用をご提案します。睡眠中は自分でコントロールできないため、噛みすぎないようマウスピースで予防することが欠かせません。マウスピースは4~5年で作り替えます。マウスピースは、昼間もお使いになることが可能です。

マウスピースの使用をきっかけに、噛み癖の問題を自覚できるようになる場合も多々起こります。この時が、感覚を切り替えられるチャンスです。

普通に噛めるようとことん指導します
【 寸止め 】 歯を当てなくても食事の8〜9割は可能であることを体感し、実践していただきます。

【 リマインダー 】 認知行動療法の手法を取り入れ、貼り紙などを活用します。普段は気にしなくてかまいませんが、貼り紙を見たら歯が当たらないように浮かせてください。歯と歯との接触を減らし、噛む力を軽減する訓練です。数十年来の癖を減らすのは困難ですから、方法を変えてみましょう。1~2ヶ月もすると見慣れて意識しなくなってしまいがちなので、10〜20枚の貼り紙を取り替えながら使用します。自己流で気をつけるのみでは、そのほとんどが逆に悪い方向に進んでしまいます。

入れ歯での噛み方もとことん指導します
歯が0本で総入れ歯を使用していても、お食事には何も困らない方もいらっしゃいます。要領良く噛めている証です。とはいえ、もっと前から要領の良い噛み方をしていれば、そもそもご自分の歯を失わずに済んだかもしれません。歯を失った時とは真逆の良い習慣を身につけ、入れ歯を上手に使いこなしましょう。

硬い食べ物がお好きな方は、つい片側の奥歯で噛んでしまいますが、総入れ歯ではできません。入れ歯が傾いて外れてしまい、歯茎に食い込んで痛くなるからです。どんな入れ歯でも、この理屈は同じです。総入れ歯で硬いものを噛むには、下顎をずらさないようにしましょう。左右の第二小臼歯を中心に両側を同時に噛むことがポイントです。この方法なら入れ歯は傾いたり外れたりせず、まっすぐに沈んで十分な力を受け止めることができます。大きいものは片噛みになりやすいので、小さめにしてください。

「左右両方で噛む」というのは、「右3回左3回噛む」という意味ではありません。左右同時に噛むという意味です。「歯の限界の3割の力で噛む」力加減を学ぶには、ご自分の指を噛んでみるという方法があります。下の小臼歯(4・5番目)に指を置いて爪を噛んでみて、痛くなったら噛みすぎの目安の4割以上ということです。入れ歯以外でも同じ方法で訓練します。要領を間違えてしまう方が多いため、何度も確認させていただきます。

入れ歯でのお食事は、車の運転と同様に加減をマスターすることが大切です。2割から3割の微調整を身に付けることです。最初はできなくても訓練してきちんと習慣化すれば、考えなくても加減を調整できるようになります。ただし、早食いは噛み方が雑になり、微調整をしなくなるので注意が必要です。

基本的な歯科診療を行います
保険診療では、虫歯は形状の復元、歯周病は進行抑制を基本とします。噛み癖が軽度の方や改善できた方は、良い方向に向かう見通しが立つので虫歯・歯周病の治療を進めます。治療後も歯が長持ちしそうであればここで終了し、メンテナンスに移行します。

必要に応じて、追加の治療をご提案します
噛み癖の改善と基本的な歯科診療だけでは、歯の温存が期待できない方もいらっしゃいます。その場合は次の段階として、補綴矯正をご提案します。

メンテナンス
歯並びと噛み合わせが改善できたら、後は長持ちさせるための取り組みをします。意識的に正しい噛み方ができない方はマウスピースを使って噛みすぎを予防するなど、元通りにならないよう気をつけてください。

せっかく噛み癖をなくす訓練をしても、3〜4ヶ月後には戻ってしまうことがよくあります。半年後には再び口腔内が悪化し、そのまま受診も忘れていると、悪化が進む結果となります。患者さまに悪意はなくても、気の緩みは悪化の入り口です。そうならないよう、半年以内には点検を受けましょう。悪化する前に食い止められれば、治療は不要です。治療のやり直しにお金を使わなくて済むよう、メンテナンスを活用してください。